翡翠はエメラルドと同じく、5月の誕生石の1つです。両方とも爽やかな新緑の季節にぴったりのグリーンをベースとした美しい宝石です。特に翡翠の艶のある質感は、身に着けるほどに魅力が増していく不思議な石で、アジア圏で絶大な人気を得ています。
古くは縄文時代から日本列島では翡翠を加工し、現在の新潟県糸魚川周辺から南北を網羅する交易路が作られていました。エジプトやメソポタミア文明が起きたほぼ同じ時代に発展した翡翠文明。今回は成功と繁栄の象徴とされた「奇跡の石」と呼ばれる翡翠について見ていきましょう。
翡翠(ヒスイ)ってどんな石?どんな色?
翡翠(ヒスイ)は艶のある緑色の半透明な宝石です。
もともと翡翠という言葉は石のことではなく、水辺に生息する野鳥の「カワセミ」でした。カワセミの腹部のオレンジ色を「翡」、背中の青色を「翠」と呼ぶことからという説と、オスを「翡」、メスを「翠」と表しているともいわれています。どちらにしても「飛ぶ宝石」と呼ばれる鳥に由来して付けられた翡翠(ヒスイ)は大変美しい石なのです。
翡翠は単一の鉱物(ダイヤモンド・ルビー・エメラルドなど)でできている宝石とは異なり、多様な鉱物が集まってできているため、含まれる成分によって色が違います。
ヒスイ輝石という鉱物からできているといわれてきましたが、深緑色の部分はオンファス輝石という鉄やマグネシウム・カルシウムを含む鉱物に近い組成を持つことがわかってきました。
- 白色:ヒスイ輝石のみ
- 黒色:石墨(せきぼく)炭素から構成される黒色の鉱物
- 青色・希少な紫色:微量の鉄やチタン(オンファス輝石に含まれている)
- 深緑色:微量の鉄やクロム(オンファス輝石に含まれている)
翡翠(ヒスイ)は2種類ある?
これまで翡翠は2種類に分けられるといわれてきました。硬玉(ジェダイト)と軟玉(ネフライト)です。しかし現在多くの分野では翡翠と呼ばれるのは硬玉(ジェダイト)で、宝飾店で販売される大半が硬玉です。そのことから、翡翠=硬玉という見解が一般的といえるでしょう。価格も硬玉の方が高価です。
軟玉(ネフライト)の硬度は翡翠より低めです。海外では質感の似てる緑色の石は、jade(ジェード)という大きなくくりでラベリングされることも多々あるそうです。
翡翠(ヒスイ)の歴史・伝説
日本では縄文時代中期から後期にかけての2000年間、ヒスイ大珠(たいしゅ)という楕円形に穴が開いた5~15㎝ほどのものが作られていました。金属のない時代に硬度の高い石を楕円に磨き、穴をあけるとは驚くべき技術です。ダイヤモンドドリルなんてありませんからね。ヒスイ大珠の用途はいまだ明らかになっていません。ですが縄文時代は呪術全盛期、シャーマンによる儀式等に使われていた呪具・聖具ではないかといわれています。
その後、弥生時代~古墳時代には勾玉(まがたま)の石として多用されましたが、なぜか奈良時代以降は日本からは姿を消すことになります。そのため遺跡から発掘される翡翠は、長らく海外から持ち込まれたものだと考えられてきました。
しかし昭和初期、古代文献に登場する高志国(新潟県糸魚川地方)の姫が翡翠の勾玉を付けていた記録と共に、糸魚川市小滝川周辺の土倉沢の滝壺から美しい緑色の石が見つかります。分析した結果、科学的にその岩石が翡翠であると証明され、日本の歴史に翡翠文明が存在したことが発見されたのです。
また中国では、美しい石は「玉(ぎょく)」と呼ばれ、王の象徴として特別に扱われてきました。翡翠もその一つとされ「玉に五徳あり」という言葉により、翡翠を身につけると五徳(仁・義・礼・智・信)が高くなると伝えられています。現在でも子供が生まれると、ブレスレットにして贈る風習があるそうです。
- 仁(人を思いやる心)
- 義(利欲に囚われず、なすべきことをする)
- 礼(礼儀)
- 智(知識を得て、正しい判断が下せること)
- 信(誠実であること)
翡翠(ヒスイ)の効果とは?
健康効果のある石は、緑色の石が多いようです。
翡翠は自然の持つ癒しの効果と同等の働きをするため、精神を安定させる効果があるといわれています。心身の疲労を感じる人にとって最適のヒーリングの石です。
また、前述の五徳(仁・義・礼・智・信)を高めるパワーストーンとしての人気が高く、トップに立つ経営者、ビジネスで成功したい方におすすめです。
翡翠(ヒスイ)の浄化方法は?
日々使用するパワーストーンにも休憩が必要です。パワーストーンは持つ人に力を与えてくれたり、マイナスなエネルギーを放出するお手伝いをしてくれています。浄化はそのためのリセット作業です。石の種類によって方法は様々です。浄化方法をしっかりと調べて正しくクリーンな状態にもどしてあげましょう。
- クラスター ◎
- セージ ◎
- 音 ◎
- 塩 ×
- 月光 ◎
- 流水 ◎
- 太陽光 △
※翡翠は太陽光での長時間の浄化は色褪せする場合があるので気を付けましょう。
翡翠(ヒスイ)の産地
■世界の産地
ミャンマー、ロシア、カルフォルニア州(アメリカ)、インドネシア など
■日本の翡翠の産地
糸魚川(新潟県)周辺、鳥取県若桜町、兵庫県養父市大屋、岡山県新見市大佐 など ※天然記念物に指定されている糸魚川市小滝川ヒスイ峡・青海川ヒスイ峡での翡翠採取は禁止されています。 糸魚川市内の海岸に打ち上げられた翡翠は拾っても大丈夫とのこと。 事前にリサーチし、現地のルールに従って採取しましょう。
翡翠(ヒスイ)の鉱物データ
- 英名 jadeite
- 和名 翡翠輝石(ひすいきせき)
- 分類 ケイ酸塩鉱物
- 化学式 NaAI [Si2O6]
- 屈折率 1.65~1.66
- 結晶系 単斜晶系
- 光沢 ガラス光沢
- 比重 3.25~3.36
コメント